自身の体験談「クローン病③」

2023年1月23日

自身の体験談「クローン病③」

クローン病について

クローン病の治療が本格的に始まりました。
と言っても、姫路では薬は何も飲まず、経口栄養と経鼻栄養からでした。

2005年の当時はまだクローン病も少なく、入院した病院で過去に一人いたぐらいでした。
ただ同時期に別のクローン病の男性の方が入院していて、後に出会うことになります。

まず経口栄養から飲み始めました。飲んだのはエンシュアリキッドという栄養剤でした。確か、胃腸を手術した後に飲んだりするもので、消化吸収に良いとのことでした。後にテレビで海外では非常食として使われていると観ました。1缶が250mlで250kcal、味はバニラ、ストロベリー、コーヒーの3種類でした。
初めて飲んだ時の感想はとにかく甘くてどろっとしているでした。この中にカロリーが凝縮されているのを感じました。とりあえずバニラから飲み、ストロベリー、コーヒーと飲みました。バニラとストロベリーは本当に甘く、あぁ分かる分かるといった味で、3種類飲んでから僕はずっとコーヒーを飲み続けることになります。

入院して、1週間程絶食、それから1週間は検査で、その間はお茶しか口にしてなかった僕にはこのエンシュアリキッドはすごく有り難く感じました。この辺りぐらいから僕の食べることについての考えが変わっていきます。このエンシュアリキッドは濃度がかなり濃いので、ゴクゴク飲んでは胃腸に負担がかかるとのことで、ちびちび少しずつ飲んでいました。確か朝昼晩に1本ずつの計3本を飲んでいたと思います。


このエンシュアを飲み始めて、すぐにこれからずっと付き合うことになるエレンタールという栄養剤を鼻からチューブを入れて流すことになります。これがまた最初のうちは拷問で拷問で、ずっとえずきながら耐えることになります。エレンタールは1袋80グラムの300kcalあり、タンパク質を更にアミノ酸まで分解した、胃腸に負担のかからない栄養剤です。これを僕らクローン病は口から飲むか(経口)、鼻から胃や十二指腸ぐらいまでチューブを入れる経鼻かのどちらかになります。正直、全てを口から飲めたら良いのですが、口から飲む場合は濃度を鼻からと比べて薄くしないといけないのと(胃腸に負担をかけないため)、量をすごく飲まないといけません。しかも色んなフレーバーがあって飲みやすくなっているとはいえ、やはり独特の味がします。お世辞にもすごく美味しいとは言えないですし、社会復帰してから日常で、この量を少しずつ飲むのは苦痛です。ですので、多くの方が夜寝る前に作ったのを鼻から入れて寝てる時間を利用して専用の機械で送ります。そして、朝起きたころには終っている、または終わった音で起こされたり、途中で詰まったりのエラーのアラー厶音で起きたりと色々あります。

このエレンタールをマリア病院で初めてすることになるのですが、今思い出すとチューブがすごく太くて、後に転院する兵庫医大のチューブに比べて3倍以上あったと思います。しかもチューブにワイヤーが入っていて使う時に抜いて使うぐらいしっかりとしていました。まず僕のエレンタールはこの太いチューブから始まりました。※この当時はどこでも治療を受けれる時代ではありませんでしたので、病院がどうとかではないです。

鼻には実は利き鼻というのがあります。左右が両方入るわけではないです(両方入る方もいらっしゃると思います)。僕は最初試したのですが、右しか入りませんでした。しかも右は少し詰まり気味で入れる時に痛いです。年中、鼻炎持ちの僕にとっては本当に辛かったです。それと、後に説明しますが、鼻炎は東洋医学では肺(呼吸器)に該当します。肺の表裏は大腸になり、クローン病の方の多くは呼吸器が弱いです。これは後の師匠に教えてもらうことになります。

チューブの話に戻り、チューブを入れる時にまず鼻から入れやすいようにゼリー状のを鼻に入れ、滑らすように入れていきます。そして、口や喉を通る時にあの胃カメラの時のようなえづく感じになり、その時に唾や水分を飲み込むと入りやすくなります。それと下を向いて首を丸くして入れると入りやすいです。チューブが太いのでとぐろ(中でぐるぐるになって入らないこと)を巻くことはなかったですが、太いので常に入っている感じがあり、入れている間はずっとえずいていました。これが最初は本当に慣れず、ずっと耐えるだけの拷問でした。今考えると通常よりも太いので仕方ないのですが(苦笑)

最初は1袋(80g)を大分薄めて、多分400~500mlぐらいにして、速度もゆっくり落としました。
本当にこの最初の1袋目がえづくのが慣れず、ずっとベットの上で座りながら、音楽を聴き時計を見ながら早く終わってくれと祈っていました。この時はこれから先のことなんて考えれませんでしたし、まして、このエレンタールを2019年の末まで約14~5年するなんて思いもしませんでした。
病気を診断される前の3つの検査も辛かったですが、この最初の1袋目が本当に長くて一番嫌なこととして、すごく記憶に残っています。
クローン病で嫌なことは確かに食べるのが制限されて、なかなかストレスですが、僕の場合はこのエレンタールを毎晩しないといけない方が一番のストレスでした。
ですので、この時の自分にもし声をかけてあげれるとしたら、大丈夫!これいつかは止めれるから、今だけの辛抱やからと言ってあげたいです。

1袋目がようやく終わりました。本当に大袈裟ですが、最初が一番長く感じました。
これをこれから毎日続けていくことになります。
ただ2日目から徐々に不思議にと慣れていきました。もちろん、チューブを入れるのは難しく、なかなか苦戦しましたが、鼻に入っている感覚とかは少しずつましになっているのが分かりました。
これを濃度を少しずつ300mlに近づけて、速度も速くしていき、慣れてきてから今度は1袋から2袋に増やしてとやっていきました。
最終的には姫路では2袋か3袋までを日中に入れて、夜はしないというのを繰り返しました。
最初は拷問でしたが、慣れてくると普通に本も読むことができました。
これ、作るのはもちろんですが、終わってからも自分でチューブやバック(エレンタールを入れる袋)を洗います。料理を作って、食べて、洗うみたいな感じです。

それと、冒頭にお話しした、もう一人のクローン病の方ですが、確か40~50代の男性で姫路周辺の方だったと思います。その方とは、エレンタールを始めて何日かしてから出会ったのですが、先生や看護婦さんが相手の方に20歳の子が今入院しているから、しかも診断されたばかりだから、会って何か話してあげてと言われたんだと思います。
看護婦さんに何号室の何々さんという方やからと言われて、会いに行きました。今でこそ、色んな方と話するのが好きですが、その当時は消極的といいますか、なかなか現実を受け入れられずにいましので、地に足がつかず、ふわふわした感じで、促されるように行きました。あと、正直あまり知りたくないというのもあったと思います。自分の未来が見えてしまう、そんな風にも考えてたと思います。

僕が初めて会ったクローン病の方は今思えば、その方も手探りな感じでした。年数はもちろん長いのですが、やはりその近辺ではなかなか治療法というのは確立してないのかなという印象でした。食事制限もしつつ、エレンタールを鼻からと口からされていました。あと、エレンタールを送る機械の音が苦手とのことで、自然滴下をされていました。自然滴下は機械を使わず、高いところから通常の点滴をする方法です。1秒間に何滴落とすかで計算したのですが、これは後程機械が使えない時の応急処置として教えてもらいます。
この方のお陰でこれからのことが少し分かったのと、先の自分のことが少し想像できてしまい、嬉しいような悲しいような、ちょっと複雑な気分でした。
その方は名前も忘れてしまいましたが、転院する時に同じ穴の狢(むじな)同士、頑張ろうと声をかけてくださりました。恥ずかしいのですが、その時は意味が分かりませんでしたが、後でその方らしいなと思いました。
あと、その時にお世話になりました、主治医の野口先生、そしていつも笑顔で接していただいた助手の先生、身の回りのお世話をしてくださった看護婦さん、本当にありがとうございました。あの時は自分のことしか考えれませんでしたが、野口先生をはじめ、多くの方が親切にしていただいたこと、ずっと今でも覚えています。僕はあの後、色々ありましが、今こうして元気にやっています。あの時間があったからこそ、今の自分があります。

そして、次は兵庫医大に転院することになります。

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